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考察:音楽・教育 - 2023年9月28日

ピアノを始めた後の学習のススメ 

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関 勝史

@pianostudio

先日公開した動画の原稿をそのままこちらに投稿します。

  • はじめに

はじめに

こんにちは。

ピアノ調律師の関勝史です。

この動画はピアノに使ったお金の元を取ると言う動画の第二弾になります。

前回の動画でピアノを始める前の準備ということで、環境づくり、発育・適性を見る、行動力を育てるというお話をさせていただきました。

今回はピアノを始めてからのピアノや音楽との向き合い方についてお話しさせていただきますが、まずはじめに、この動画を作るきっかけとなってくれた出会いが3つあるので紹介させてください。

野球部の兄の行動力

まず1つ目が、私がピアノの調律に伺っているお客様のお宅でのことです。

小学生の女の子がいるご家庭にお母様の実家からピアノを移動して、お手入れしました。年1回伺って何回目かの調律の時に聞いて驚いたのですが、中学生の野球部のお兄ちゃんがある日、突然、ベートーベンのエリーゼのためにを弾き始めた、というお話がありまして、ピアノ教室に行ったこともないのにどうやってやったの?と聞いたら「YouTube見て練習した」と言ったのです。

当時まだユーチューバーという言葉もなかった頃で、まだ世間にYouTubeが浸透してなかった頃だったので、大変驚いたのを覚えています。家にピアノが来た、とりあえずやってみるか。と言う軽い気持ちで、初めての1曲でエリーゼのためにを弾いたのですからたいしたものだと思います。

環境が整っていた

2つ目は、僕と一緒にピアノレッスンをしていた小学生の男の子で、この子は3年生の時に初めて僕のところに来て、小学生が通常使うようなテキストでは練習しないだろうということで、ポピュラー系の音楽をコード弾きする練習をしていました。

だんだんマンネリ化してきたある日おしゃべりしていたら、お母さんがクラシック好きでこの子も普段から聴いているということがわかりました。

ショパンの木枯らしが好きだというので楽譜を持たせてやってみましたが、さすがにこれは難しかったようで挫折気味でした。

他に何かシンプルな曲はないかと考え、雨だれだったらどうかと聞いたところ知っていると言うので、簡単アレンジではない本物の楽譜を渡しました。

最初の1ページを読むのに、3週間ぐらいかかったのが、だんだん加速していって残りの4ページを2週間で読みきってきました。

やっているうちに、自分が知っているショパンの雨だれを自分で再現しているのが楽しくなってきたんでしょうね。

その後お母さんも乗り気になって、次にリストの愛の夢の楽譜を買ってあげて弾いたり、ドビュッシーの月の光なども弾いていました。

お母さんから「うちの子、朝6時からピアノを弾いて困ってるんです」と言うクレームをいただきました。クレームといっても、半分冗談交じりの嬉しそうな感じがしました。

いつもやりたいことがある

もう1人の子も一緒にピアノレッスンをやっている男の子なんですけど、この子は私がこれをやろうと言って渡した課題には一切手をつけてくれませんでした。

代わりに自分が好きなドラゴンクエストやガンダムの曲は、しっかり練習してくる子で、30分のレッスンで「今週はこれを弾いたんだ。」と勝手にタラララランと弾いて聞かせてくれて、弾き終わると、こちらがコメントする間も与えてくれず「あとはこれとかねー」とか言いながら何曲か自分が弾きたいように弾いて、時間になったら「あ、時間だ。じゃあまたね。」と帰っていって、まるで台風が過ぎ去った後のようでした。

何かしら「これが弾きたい」とリクエストがあったり、合唱コンクールの伴奏にも率先して立候補しているようで、とにかく行動力のある子です。ちなみにこの子は前回の動画で紹介した、朝起きたらお母さんがいないから自分で朝食の準備をして食べて支度して学校に行くと言う子で、春休みには自転車で10キロ以上離れたところまで出かけて行ったりとすごいエネルギーの子です。

この出会いがあったから

これらのエピソードに出てくる子たちの共通点は、自ら動いていることです。

自分でやってみようと思い立って、自分で動いてピアノ曲の演奏を自分のものにしている、そういう子たちを見て、前回の動画でお話ししたようなピアノを始める前の準備、前提というものがあるんだなと感じるようになりました。

意欲的な生徒と先生のジレンマ

また、自分で行動する子を象徴している、あるピアノの先生の書き込みがSNS上にありました。どんな書き込みかというと、

生徒が「YouTubeでこんなことを言ってました」「YouTubeではこう演奏してました」とレッスン中に発言してくるのが嫌。先生に習うならYouTubeは参考程度に活用してほしいです。

先生の視点では、自身が指導しているのに、全く違うものを引き合いに出されるのは嫌なのかもしれませんが、最近の意欲のある子にとっては普通の自然な行動です。

後ほどお話ししますが、このような生徒の環境に合わせて教える側も変わっていかなければいけないと考えています。

変わる「学習」広がる「格差」

昔だったらピアノを習う、もしくはピアノに限らず、何かしらの技術を身に付けようとしたら、専門家の方に指導を仰ぐのが1番の近道でした。音楽で言えば、先生に習う以外にもレコードを聞いたり、コンサートに足を運んだり、ビデオを見たり、または本を読んだりするのも情報収集の手段だったと思います。

対して、現代ではYouTubeを始め、様々なSNS、インターネットを通じて知りたいことを探せるるようになり、さらには国境を越えて、海外の専門家の発信を、あわよくば無料で見たり相談することもできます。

僕の個人はネットを活用して、カーオーディオの交換をしたり、ママごとキッチンを木工で手作りしたり、ダイエットもインターネットで情報を集めてこなしたりもしました。

学びがDIYできるようになっていってる、ということです。

そしてテクノロジーを活用した学びをする人と、誰かにお願いして手解きしてもらう人との間に明確な差が広がっているのを感じています。

余談ですが、生徒さん達に学びのDIYを見てもらうために、僕自身は、バイオリンの演奏や修理などをネットを通じて研究し、実践しています。

では人はいらないのでしょうか?インターネットを活用して学びをDIYできるならば、人に教わる必要は無いのかと言われれば、そんな事はないと思います。

良い出会いは宝物ですし、専門的な訓練を積んだ人に指導してもらえると細かいところで気づきを得られて貴重です。

良い先生の見分け方2023

そうすると、ピアノ教室や音楽教室を探すことになるのですが、ここで現代ならではの先生の探し方を私は提案したいと思います。

そのピアノの先生が良い先生なのか、そうでないのかを見極める方法、それはその先生がセカンドオピニオンを許容してくれるかどうかを聞いてみることです。

冷静に客観的に考えれば、悪い先生なんていないと思います。

真面目に仕事に取り組んでいる先生はみんな良い先生です。

主役は誰?

ポイントは学びにおいて生徒が主役であることに重点を置いてくれるかどうかなんですね。

先ほど紹介したSNSの投稿では、生徒がYouTubeで見たものを引き合いに出してくることを先生は嫌がりました。

確かに昔だったら教えてくださる先生に対して外ではこうだったと聞くのは失礼に当たったでしょう。

しかし情報の流通が活発になっている現代では、意欲のある生徒は、次から次へと情報を取り寄せてきます。  

その取り寄せた情報より自分の指導だけに耳を傾けるよう生徒に求めていては、先生の指導が窮屈に感じるようになるかもしれません。

偉人の母の教育

発明王のエジソンは、小学校に入るなり、先生にあれはこれはと質問をして先生を困らせ、ついには学校に登校することを拒否されたそうです。

エジソンのお母様は、そんな息子の要望に応えられるよう、最大限努力して息子を育て、エジソンは、あのような発明王になりました。

1人の先生が多数の生徒を指導する学校の判断は、当時としては仕方なかったかもしれません。

でも、お母さんは学びの主人公が息子であることを大切にした、当時としては、先進的な子育てをされたお母様だったのだと思います。

現代では知りたいこと、学びたいことをどんどん検索して自分に吸収していくことができます。

指導する側は、自分が持っているノウハウを生徒に授けるのに加え、生徒が自分で獲得してきた知識をどう活かすか、多様な表現や知識を許容しながら手助けしてあげる役割に変わっていくのではと考えています。

欠けているのはココ

「多様な」という言葉が出ました。

これからは目まぐるしく行き交う情報を自分の中で消化する能力が必要となります。

実はこの「数ある中から吟味してピックアップする」ことは日本の学校が教えていないことで、今多くの日本人が苦手とする作業だと思います。

僕はこれを「検証する技術」と呼んでいますが、学校は検証することを教えません。

その代表例が、生徒に対して担任の先生が1人であることです。

担任の先生がこうしなさいと言った。そのときに、それは本当に自分にとってプラスになることなのだろうか、他の人の意見を聞いて、取捨選択をすると言う機会が、生徒には与えられていないのです。公立は通う学校に選ぶこともできないですしね。

生徒が注意するべき①

逆に、生徒側が「慣れた先生がいい、先生を変えたくない」という場面を何度となくみてきました。

以前、ある先生が寿退職をするときがあって、先生が変わることを生徒さんに告げたら「先生が辞めるならピアノ辞める」ってなったんですね。そうしたらその先生が「わたし先生やっててよかった」って喜んだんですけど、僕はそこはピアノをやめてしまうことを嘆くところなんじゃないかな、と思ってました。

もちろん素敵な出会いは大切ですが、ピアノを始める前の準備ができていたら、誰が先生であっても音楽への探求は変わらないと思うんですよね。

視野を広めるためには、いろんな意見に耳を傾けることも大切です。

生徒が注意するべき②

あともう一つ。「うちの子やらないから強制的にやるルーティンを作りたい」という声も聴きますが、自発的に動く習慣を身に付けなければ、ルーティーンがなくなった途端に止めてしまう可能性も大きいです。

「すみません。今週忙しくて全然練習できていないんです。」と謝る生徒さんは多いです。

でも、それは先生基準の考えであって、生徒基準で考えるならば、レッスンは毎週必要なのかとか、今練習している題材が、本当に自分が好きなものなのかとか、検証すべき事はいろいろあると思います。

僕の子供が中学生の時に「学校の勉強で地理が難しい」て言ったんですね。地理なんて地球上にはどんな土地があって、どんな国があって、というような世界について知る学問で、難解な数式を解くような能力を必要とする授業でもないのに「難しい」といったことが不思議で「それは教科書か先生の授業が面白くないだけだろ」と言ったら、後で子供は「うちのお父さんって考え方が変」外で言っていたそうです。

でも地理なんてグーグルアースとウィキペディアがあれば仮想的に世界を旅できて、すごく楽しく勉強できると思うんですよね。

なんで勉強しなきゃいけないの?

だから、多くの子が「なんで勉強しなきゃいけないの?」て思ってると思うんですけど、中学校まで勉強する内容って、世の中のことを知れる楽しいことだと思うんですよね。僕、あんまり真面目に勉強する方ではなかったですけど、大人になった今、義務教育で教える事は大切だと思うし、それなりに覚えてて得することもあります。

だけど、学校の勉強のプロデュースの仕方が画一的で面白くないのに、学習指導要領に定められているからとか、受験で出題されるからといって、押し付けて詰め込むから子供たちは嫌嫌になってしまう。

だいぶ昔ですけど、上岡龍太郎さんがUFOとか心霊写真とか超常現象をテレビで糾弾していて「そんなわけのわからないものより、自然科学の方がよっぽど不思議がいっぱいでロマンがあってワクワクする楽しい世界なんだ」と発言していたことがあって、なるほどなぁと思いました。

基礎って何ですか?

音楽なんて自由なんだから、自分がやりたいことを見つけて、それにのめり込めばいいと思うんですよ。基礎が大事って言うけど、そういう機会的な練習は本人が気がついて「これが必要だ」って思ったとき初めてやればいいことで、よくわからないけど「大切だから」とか「君の為だよ」という教える側の視点でさとされて、やらされていてはつまらないことになってしまうんですね。

僕が思う基礎っていうのは、それこそ前回の動画で紹介したピアノを始める前の準備のことで、それが備わっていたら、先に紹介した3人のように、言われなくても勝手にもくもく練習するんですね。

誰の成果ですか?

他にも検証したいことがあります。

逆の立場、つまり先生側は教えることが業務なので、お金を受け取る以上成果を出さなければならないということです。

例えるならば、大人が手伝った夏休みの自由研究みたいなもので、きれいに見繕ってはあるけれども、本人は全く内容を理解していない、というようなことは音楽教室業界では結構あるように感じています。

これは、何も先生だけが悪いわけではなくて、時に、保護者さんが「あの子はあの難しい曲弾けるのに、家の子はなんでまだこれなんですか?」と詰め寄られることもあるらしくて、致し方なく、と言うこともあるそうです。

ただし先生側が手っ取り早くできているように見せる、と言うこともないとは言えないと思います。

また音楽の発表会が生徒の発表会と言うよりも、先生の成果の発表会になっていて、生徒はやらされているから達成感が「自分でやった」というより、「あー終わった」とか、肩の荷が下りたような、音楽とは関係ないところで安心してる場面もあります。

子育て、ママさんのブログ記事にも紹介されていたので、リンクを貼っておきます。

人に教わることで本来目指すべきものを見失っていないのか、よくよく検証する必要があると思います。

過信

素晴らしい先生に出会い、任せることで安心を得られることもありますが、必要以上に任せてしまう、つまり、過信することの危険性もあります。

これはウィキペディアに書いてある事なので、名前を出させていただきますが、昔テレビでアナウンサーを務めていた逸見政孝さんという方が、体調不良を訴え、主治医に相談したところ、初期の癌であるということがわかったそうです。

手術をして、ほどなく仕事に復帰しましたが、再び体調が悪化したので、もう一度先生に相談に行ったところ再び手術をすることになったのですが、逸見さんが「先生、執刀してくれますよね?」と尋ねたところ「僕その時夏休みなんだよね」と言う返事が返ってきて、そこで初めて「え?」って思って他の病院で見てもらったところ、相当病気が進行しており、逸見さんは残念ながらその年を越すことができないまま世を去りました。

周囲は逸見さんに他の病院でも受診するよう進言していたものの、本人は全幅の信頼を寄せて聞かなかった結果であったともいえるかもしれません。

医療の世界でセカンドオピニオンが一般的になっていったのはその後だったと思います。

まとめ

音楽から話がそれましたがまとめますと、ピアノに使ったお金の元を取るにはいつまでも音楽が続くこと。そのためにはあらゆる方向にアンテナを向けて情報収集する好奇心がとても大切です。

特に目まぐるしく物事が変化していく今の世の中では一点だけに集中していると気がついたら置いてきぼりになってるなんてこともおきかねません。

ジャズの帝王と呼ばれた。マイルス・デイヴィスは、若いミュージシャンに「変わり続けろ、一度演奏したフレーズは、もう二度とひくな」指示していたそうです。実際、マイルス自身も音楽のスタイルを変え続け、ジャズからフュージョンというジャズとロックを融合させた新しい音楽を生み出し、自分自身を変化させ続けていました。

いろんなものを見聞きして「自分はこれだ」と思える何かを探し続けることが音楽の楽しみの一つだと思います。音楽は感動という宝探しであり冒険です。この宝探しを楽しむには、音楽に普段から聴いて、歌って、行動し続けることで、誰かにやってもらって得られる喜びではないはずです。

以上、長くなりましたが、ピアノを持つ人がいつまでもピアノを楽しむ一つの考え方として役立てていただければ幸いです。

ここまではどう学ぶか、吸収するかというインプットのお話でしたが、また機会を作って、今度は得たものが正しいのかどうかを「検証するには」という視点、アウトプットについてもお話しする機会を作りたいと思います。

ご視聴いただき、ありがとうございました。