高校生のときに駅ビルの精肉店でアルバイトをしていました。そこに「なぜあなたはここの社員になったの?」と言われるほどの高学歴で頭のいい社員さんがいて、当時言われたことが鮮明に心に残っています。
「優秀な部下は6W1Hの質問はしない。6W1Hの質問は相手に考えさせる。優秀な部下はYes/Noクエスチョンまで選択肢を絞り込むことで上司に考えさせない、つまりできるところまで仕事を進めて最後の最後だけで判断を仰ぐんだ。」
6W1Hとは、What、When、Where、Who、Whom、Why、Howのことです。
「これどこに持っていけばいいですか?」
「いつまでに仕上げればいいですか?」
という質問は抽象的で相手に幅広い選択肢を投げかけます。
対して
「これは棚の二段目でいいですか?
「この仕事が仕上がるまで1時間かかりますが大丈夫ですか?」
と問い掛ければ、相手はイエスかノーの二択になるので負担が減るというものでした。
当時の私はなるほどと思い実践するのみでしたが、経験を積むにつれてイエス/ノーに持ち込むことで目上の人を誘導する小技も身につけることができました。
さて、問題は今自分がこのテクニックを人に身につけてもらう立場にあるということです。しかも幼稚園児や小学生を相手に。
質問に答えないことも大切
好奇心旺盛な子供たちは、目に入るものを「あれは何?」、「どうして?」というような6W1Hクエスチョンを連発してきます。わからないことを知りたい気持ちはとても大切なことです。
ある日、ピアノ調律師として保育園でピアノの調律をしていました。保育園でのあるあるなのですが、「おじさん、なにしてるの~?」と園児たちが寄ってきては聞いてきます。「ピアノの音をきれいにしてるんだよ」とか「ピアノを直してるんだよ」と答えるのですが、ある子が「おじさん、ピアノ直してるの?」と聞いてきました。
このときに前述の社員さんの言葉がフラッシュバックして、この子は状況を見ておじさんが何をしているのか予想して自分の仮説をYes/Noクエスチョンで訪ねてきたと思いました。
今までは子供に尋ねられたら答えるのが大人の役目だと思っていましたが、疑問に思ったことをそのまま答えるのではなく、考えさせることも大切だと思い直しました。なので、6W1Hの質問に対してはオウム返しのように「何だと思う?」とか、「どうしてだと思う?」と返すようにしています。そうすると多くの子は黙って立ち去るのですが、そのときに想像させて行動(発言)させることが主体的な学びにつながると考えています。
自力で答えを導き出すことの大切さ
小さなお子さんでは仕方なくても、このまま大人になっているケースは多いと思います。目の前に問題が現れたときに6W1Hの質問を投げかけるのは解決を外部に委ねる他力本願であり、悪く言えば頭を使っていない証拠です。目の前の疑問や問題を検証し、解決への道筋をたてる技術を身に付けることこそ主体的な学びであり、幼児でも不可能ではないと思います。
ピアノも、演奏を聴いた感動とできるようになりたい願望をそこへ向かう行動があれば、6W1Hの質問を投げかけなくても自分で形にできるようになるはずだと思います。ぜひ、生徒さんたちと共有して実践していきたいです。